七戸 優
Masaru Shichinohe
私の内なる世界は完全に現実から隔たれており、作品を実社会の鏡にする気はありません。 私が画面に描き出す人工感は、現実から脱却する願望の現れです。凝固した様な作品世界を通して、特定の時代、情景や人種によらない、宇宙的郷愁を表現したいです。
私が描く少年少女は自分が作る人形と同じ様に、模型であり、自身自身の投影でもあります。 時々、子供時代の記憶を呼び起こす様な懐かしい物を見つけて来ては、カーテンと絨毯とソファの間に配置して描き、舞台的な雰囲気を持つ作品を描く。それは、自分の記憶を美化する過程でもあります。描きたいのは本物の子供時代ではなく、幻想の中にある理想の子供時代であり、絵を描くことは、実は子供の頃の記憶を描き変える手段でもあるのです。
子供の頃は、押入れに入って小さな穴から外を覗いたり、鍵穴から密室を覗いたりするのが好きで、見る側と見られる側がはっきり分かれることには興味を感じていました。
私の創作行為は写真とは違い、時間の流れの中の一瞬を切り取るのではなく、自分の精神世界に関わるすべてのものを、静止した瞬間の中に凝縮させたいのです。
ルネッサンスの古典絵画、シュールレアリスムやダダイズム、幻想文学、大学で建築を専攻したときに身につけた製図技術などは、常に私の絵に影響を与えています。
BIOGRAPHY
1959年青森県弘前市生まれ
東京にアトリエを構える
武蔵野美術大学では建築設計を学び、卒業後3年間建築会社で設計業務に携わる。次第に建築自体よりも設計図面の美しさに惹かれることに気付いた。建築の仕事を辞し、独学で画家を志す。
ウィーン幻想派を始めとする古典絵画に影響を受け、20世紀中頃の幻想文学の世界を絵画に導入することを模索し、自身の表現方法を確立する。
ジャンルを超えた活躍を目指し、ファインアートとしての絵画製作を続けながら、絵本を出版し、小説の表紙に多数作品提供を行う。
日本のみならず、香港、台湾、中国本土を始めとする中国語圏地域で展示会が行われ、作品を広く親しまれる。東アジア、東南アジアに渡る地域において、美術館や個人に多数収蔵される。
EXHIBITIONS
2022 「凝 - 刹那と永劫」 PING Art Space、台北
2020 個展, West Bund Art & Design, Hillside Gallery / Hive Center for Contemporary Art、上海
2018 「東京私語」Hillside Gallery / Hive Center for Contemporary Art、北京
2017 「幻真」Hillside Gallery、東京
2010 「月下のすみれ」Ping Art Space、台北
2009 「美しき いとけなき 婦人に始まる」青木画廊、東京
2007 「Dark-haired Cinderella」青木画廊、東京
2004 「プラトニック」青木画廊、東京
2002 「収束する平行線」青木画廊、東京
2001 「‘t’を持たない少年」青木画廊、東京
1994 「物理学談義」HBギャラリー、東京
BIBLIOGRAPHY
2020
Tokyo Whisper
東京私語
2017
Phantasmagoria
幻真
2010
Black Angel
月下のすみれ
月下紫羅蘭
2005
Oishasan-gokko
オイシャサンゴッコ
小醫生
2002
Hako-Shonen
箱少年
箱子少年
2001
Campanélla-The Mechanical Boy and the Magic Bugle
カンパネルラー機械仕掛けの少年の魔法の角笛
Campanélla-機械少年與魔法號角